トポロジカル物質とは?

TopoLogicについて

 無限の可能性を秘めた”量子材料”トポロジカル物質のあゆみと、前代未聞の物理効果について解説します。

トポロジカル物質のあゆみ

 「トポロジカル物質」は1970年頃から研究が進められてきた物質です。

 2016 年には、「トポロジカル相転移および物質のトポロジカル相の理論的発見」の業績で、3 名の研究者がノーベル物理学賞を受賞しています。
 語源となる「トポロジー」とは、「物質を切ったり穴を空けたりしない状態で、連続的に形状を変えても性質が維持される幾何学的な性質」を示す、数学における概念です。

 2016 年頃より東京大学大学院・中辻研究室にて、電子構造においてトポロジーな性質を示す物質の発見が進み(※1)、2017年以降にデバイスなどに応用可能な性質が発見されていきました(※2)。

※1:Nature 527 212-215 (2015) 
※2:Annu. Rev. Condns. Matter Phys. 13, 119 (2022)

 これらの発見が世界中で注目され、今日では通常の絶縁体・導体(金属)・半導体の枠に当てはまらない、新たなカテゴリとして「トポロジカル物質」が研究の一分野となっています。

「異常ネルンスト効果」と「異常ホール効果」

 「トポロジカル物質」は、これまでの物質とはまったく異なる電子バンド構造を持ち、従来の代表的な物質である絶縁体・導体(金属)・半導体には見られない現象を起こす物質です。
 この特異な性質によって生じる代表的な物理効果に「異常ネルンスト効果」と「異常ホール効果」があります。

異常ネルンスト効果

 トポロジーな電子構造に基づき従来の物質にはみられない「仮想磁場」の性質を有する「トポロジカル物質」に熱が流れると、温度勾配および「仮想磁場」の磁化方向に対して垂直方向に電圧が発生します。
 この熱電効果を「異常ネルンスト効果」といいます。

Akito Sakai(2020),
”Iron-based binary ferromagnets for transverse thermoelectric conversion”,Nature 581, pp.53–57

 

 一方、一般的な物質では、温度勾配と同じ向きにしか電圧が発生しません。この一般的な熱電効果のことを「ゼーベック効果」と呼びます。

 従来の熱電材料では、「ゼーベック効果」の温度勾配と電圧の向きによる制約から、構造や形状の自由度が低く、原材料や製造コストも高いという課題がありました。
 しかし「トポロジカル物質」の「異常ネルンスト効果」を用いれば、高速応答・高感度かつ自由度の高い熱電材料を低コストで量産可能となります。

異常ホール効果

 「トポロジカル物質」にある方向に電場をかけると、外部磁場がない場であっても、電場と平行方向だけでなく垂直方向にまで電流が生じます。
 これはトポロジカル物質の強磁性体性質により、自らの「仮想磁場」で外部磁場の役割を担うためです。
 この物理効果を「異常ホール効果」といいます。

画像出典:
東京大学 中辻 知 理学系研究科 教授

「トポロジカル物質を用いた量子エレクトロニクス」
https://www.u-tokyo.ac.jp/adm/fsi/ja/projects/d3/project_00011.html
最終閲覧日:2023年8月10日

 

 「異常ホール効果」では、一般的な電気伝導とは異なり、物質に対してエネルギー損失の非常に少ない電流が生じます。
 この性質を応用することで、低消費電力かつ超高速で書き込みを行える磁気メモリ素子を低コストで量産可能となります。

あらゆる熱課題・演算課題を解決!トポロジカル物質の革新的デバイス

 TopoLogicでは、以下のプロダクト開発および、それに伴う各社とのPoC(技術検証)を進めています。

熱流束センサ| TL-SENSING™

従来の熱センサと比較して、

  • 100倍以上の高速応答+高感度
  • 1/1000以下の薄膜構造
  • 数百分の1以下の低コスト量産が可能


磁気メモリ| TL-RAM™

従来の磁気メモリと比較して、

  • 10 分の1 以下の低消費電力
  • 2桁速い超高速書き込み
  • 単純な層構造で低コスト量産が可能

トポロジカル物質で築く産業の未来

 トポロジカル物質には、幅広いデバイスやサービスへの応用が期待されています。
 たとえば、弊社のプロダクトでもある異常ネルンスト効果を利用した熱流束センサ、特殊なスピン特性を利用した磁気メモリでは、将来的にそれぞれ次のような用途での活躍が見込まれています。

熱流束センサ『 TL-SENSING™』の活用例

  • バッテリーやパワー半導体の異常検出、故障予知
  • 体温や車内、室内の熱快適性コントロールデバイス
  • 化学センサ、ガスセンサ(例:水素、アンモニア)
  • 工場生産現場の熱マネジメント
  • 人体モニタリング など

磁気メモリ『TL-RAM™』の活用例

  • 1次キャッシュメモリ
  • 現存するDRAM、SRAMの代替メモリ
  • IoT デバイスへの組み込み
  • エッジデバイスへのAI搭載 など

幅広い技術提携で共に革新的デバイスを構築しませんか?

 私たちのビジネスモデルは「エンジニアリング」と「IP ライセンス」を基軸としており、現在は複数の協業企業様とのPoC(技術検証)を実施中です。

 弊社の技術に興味を持っていただきましたら、ぜひお気軽にお声がけください。
 新たな産業創出のパートナーとして最大限お力になれるよう尽力いたします。



 お問い合わせは、当メディアのメールフォームまたは<info@topologic.jp>までお願いいたします。

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